トランクス

「立嶋さん」

ロードワークから戻った会員が云いました。

「大変恥ずかしいのですが」

何事かと思ったらトランクスを忘れたといいます。

「いいよいいよ、これ使いなよ」

何枚か置いてある自分の予備を貸しました。
試合で履いたトランクスは練習用に降格です。
ボロボロになったら、たまにTwitterなどで希望者に
練習道具等を差し上げています。

選手は皆、忘れるものです。
なので、予備を置いてあるのですが。
どうせ予備があるからと軽んじて忘れる訳ではありません。
誰も経験があるかと思います。
試合当日にも忘れます。
これも、僕だけではなくどの選手もかと思います。


当日、緊張感を高めて控室に入ります。
まだ時間があることを確認してゆっくりとコーヒーを
啜りながら雑談して緊張を誤魔化して先送りします。

あえて緊張を高めないようにして雑談するのです。
でも、今度は解しきらないよう会話の内容には気を使います。
解きすぎると今度は締まらないからです。

少しづつ、試合が近づいて、そろそろかなとバンテージを
巻き、テーピングをして、そしてトランクスを、
「あれ?」
「あれ?」
しかし、ないのです。
どこを探しても見当たりません。

どうしよう、どうしよう。
散散狼狽えます。
しかし、狼狽えようと何しようとない物はないのです。


「あれ?」
腕時計に目をやって時間を確認します。
着替えながら安堵します。
そして、ロードワークに出ます。
減量中で安堵しながら、試合当日にトランクスを忘れないよう
誓いながら、夢でよかったことを安堵しながら走ります。

 

 

試合当日にトランクスを忘れる夢を、減量中に見たことは
数え切れません。
練習では実際に忘れることはしょっちゅうです。
でも、試合当日に忘れたことは1度だけあります。
昨年、沖縄で赤コーナーと思っていて赤のそれを用意して控室に
入ってから青コーナーということに気づき、履き替えました。

いつも、トランクスは2枚用意して控室に入ります。
アップ用のそれと、試合用のそれの2枚です。
アップ用のそれが青だったのでそれを履いて試合しました。

試合で履いたそれは練習用に降格することは度度です。
履けなくなったそれや他はTwitterなどで欲しい方に差し上げたり
しています。

練習用のそれが試合で履かれるという前代未聞の昇格をした
ことがあるという、ただそれだけの話です。