瞬き

「現役生活なんて、気が付いたら一瞬で終わるよ」 先日、練習終了後に他の会員がいなかったので、 リョウと挑己を呼び止めました。 下の名を呼称して馴れ馴れしく上からのようにも思いますが、 リョウはリングネームだからそのままで挑己は息子だから 苗字で呼ぶのは変なので下の名で 「立嶋さん」 でも、息子は僕をそう呼ぶので僕は「立嶋」と、呼び捨てに すればよいのかもしれませんが、でも、云いづらいので 下の名で呼称します。 そんなことは何度も何度も云っているのです。 小学生の頃から云っています。 その頃は理解できていなかったと思います。 いや、もしかしたら出来ていたのかもしれません。 彼がデビューするころにも云いました。 「いいか、現役生活っていうのは瞬きするくらい短いからな」 決して真面目に聞かなかった訳でもないでしょう。 馬鹿にもしていないでしょう。 でも、不謹慎に笑っていました。 僕はそれに対して咎めたのですが、でも、しかし、そういう ことなのです。 「あんたが云うな」 そういう含み笑いだったのです。 分かっていなかったのは僕の方かもしれません。 「あのね、俺は奇跡的に運がいいだけなんだよ」 先日、言葉を足して云いました。 30歳を過ぎた辺りのリョウと、21歳の挑己にもっとがつがつ して欲しかったのです。 「気が付いたら終わっていて、もっと頑張ればよかったって 思っても、その時では遅いよ」 息子に目をやったら正座していました。 上からものを云ったつもりはありません。 ただ、本人のその時の気構えと取るのか、成長したのかな 少しそう感じて、でも、少しでも切っ掛けになれば内容とは 思います。 6歳から父子家庭になって、少しでもよかったと思ってもらい たいですし、そうなる為に僕が出来ることといえばキックボクシングを 教えてやることくらいしか出来ません。 僕の著書を読んでキックボクサーを志して福島から上京してきた リョウに対してもそうです。 少しでも力になってやりたいと思うのです。 強いとか上手いだけの選手とかが無意味とはいいません。 凄いことだとは思いますが、でも、そこに気持ちがないと いけないと僕は思うのです。 そういうことを伝えました。 観てくれたお客さんが思い出してくれるような、そんな試合を 目指して欲しいと思います。 僕だってまだ、そこを目指しているのです。